欢迎光临 TXT小说天堂 收藏本站(或按Ctrl+D键)
手机看小说:m.xstt5.com
当前位置:首页 > 世界名著 > 《吾輩は猫である》在线阅读 > 正文 十一 - 11
背景:                     字号: 加大    默认

《吾輩は猫である》 作者:夏目漱石

十一 - 11

「まあ羅甸語などはあとにして、ちょっと寒月君のご高話を拝聴仕(つかまつ)ろうじゃないか。今大変なところだよ。いよいよ露見するか、しないか危機一髪と云う安宅(あたか)の関(せき)へかかってるんだ。――ねえ寒月君それからどうしたい」と急に乗気になって、またヴァイオリンの仲間入りをする。主人は情(なさ)けなくも取り残された。寒月君はこれに勢を得て隠し所を説明する。

「とうとう古つづらの中へ隠しました。このつづらは国を出る時御祖母(おばあ)さんが餞別にくれたものですが、何でも御祖母さんが嫁にくる時持って来たものだそうです」

「そいつは古物(こぶつ)だね。ヴァイオリンとは少し調和しないようだ。ねえ東風君」

「ええ、ちと調和せんです」

「天井裏だって調和しないじゃないか」と寒月君は東風先生をやり込めた。

「調和はしないが、句にはなるよ、安心し給え。秋淋(あきさび)しつづらにかくすヴァイオリンはどうだい、両君」

「先生今日は大分(だいぶ)俳句が出来ますね」

「今日に限った事じゃない。いつでも腹の中で出来てるのさ。僕の俳句における造詣(ぞうけい)と云ったら、故子規子(こしきし)も舌を捲(ま)いて驚ろいたくらいのものさ」

「先生、子規さんとは御つき合でしたか」と正直な東風君は真率(しんそつ)な質問をかける。

「なにつき合わなくっても始終無線電信で肝胆相照らしていたもんだ」と無茶苦茶を云うので、東風先生あきれて黙ってしまった。寒月君は笑いながらまた進行する。

「それで置き所だけは出来た訳だが、今度は出すのに困った。ただ出すだけなら人目を掠(かす)めて眺(なが)めるくらいはやれん事はないが、眺めたばかりじゃ何にもならない。弾(ひ)かなければ役に立たない。弾けば音が出る。出ればすぐ露見する。ちょうど木槿垣(むくげがき)を一重隔てて南隣りは沈澱組(ちんでんぐみ)の頭領が下宿しているんだから剣呑(けんのん)だあね」

「困るね」と東風君が気の毒そうに調子を合わせる。

「なるほど、こりゃ困る。論より証拠音が出るんだから、小督(こごう)の局(つぼね)も全くこれでしくじったんだからね。これがぬすみ食をするとか、贋札(にせさつ)を造るとか云うなら、まだ始末がいいが、音曲(おんぎょく)は人に隠しちゃ出来ないものだからね」

「音さえ出なければどうでも出来るんですが……」

「ちょっと待った。音さえ出なけりゃと云うが、音が出なくても隠(かく)し了(おお)せないのがあるよ。昔(むか)し僕等が小石川の御寺で自炊をしている時分に鈴木の藤(とう)さんと云う人がいてね、この藤さんが大変味淋(みりん)がすきで、ビールの徳利(とっくり)へ味淋を買って来ては一人で楽しみに飲んでいたのさ。ある日藤(とう)さんが散歩に出たあとで、よせばいいのに苦沙弥君がちょっと盗んで飲んだところが……」

「おれが鈴木の味淋などをのむものか、飲んだのは君だぜ」と主人は突然大きな声を出した。

「おや本を読んでるから大丈夫かと思ったら、やはり聞いてるね。油断の出来ない男だ。耳も八丁、目も八丁とは君の事だ。なるほど云われて見ると僕も飲んだ。僕も飲んだには相違ないが、発覚したのは君の方だよ。――両君まあ聞きたまえ。苦沙弥先生元来酒は飲めないのだよ。ところを人の味淋だと思って一生懸命に飲んだものだから、さあ大変、顔中真赤(まっか)にはれ上ってね。いやもう二目(ふため)とは見られないありさまさ……」

「黙っていろ。羅甸語(ラテンご)も読めない癖に」

「ハハハハ、それで藤(とう)さんが帰って来てビールの徳利をふって見ると、半分以上足りない。何でも誰か飲んだに相違ないと云うので見廻して見ると、大将隅の方に朱泥(しゅでい)を練りかためた人形のようにかたくなっていらあね……」

三人は思わず哄然(こうぜん)と笑い出した。主人も本をよみながら、くすくすと笑った。独(ひと)り独仙君に至っては機外(きがい)の機(き)を弄(ろう)し過ぎて、少々疲労したと見えて、碁盤の上へのしかかって、いつの間(ま)にやら、ぐうぐう寝ている。

「まだ音がしないもので露見した事がある。僕が昔し姥子(うばこ)の温泉に行って、一人のじじいと相宿になった事がある。何でも東京の呉服屋の隠居か何かだったがね。まあ相宿だから呉服屋だろうが、古着屋だろうが構う事はないが、ただ困った事が一つ出来てしまった。と云うのは僕は姥子(うばこ)へ着いてから三日目に煙草(たばこ)を切らしてしまったのさ。諸君も知ってるだろうが、あの姥子と云うのは山の中の一軒屋でただ温泉に這入(はい)って飯を食うよりほかにどうもこうも仕様のない不便の所さ。そこで煙草を切らしたのだから御難だね。物はないとなるとなお欲しくなるもので、煙草がないなと思うやいなや、いつもそんなでないのが急に呑みたくなり出してね。意地のわるい事に、そのじじいが風呂敷に一杯煙草を用意して登山しているのさ。それを少しずつ出しては、人の前で胡坐(あぐら)をかいて呑みたいだろうと云わないばかりに、すぱすぱふかすのだね。ただふかすだけなら勘弁のしようもあるが、しまいには煙を輪に吹いて見たり、竪(たて)に吹いたり、横に吹いたり、乃至(ないし)は邯鄲(かんたん)夢(ゆめ)の枕(まくら)と逆(ぎゃく)に吹いたり、または鼻から獅子の洞入(ほらい)り、洞返(ほらがえ)りに吹いたり。つまり呑みびらかすんだね……」

www.xiaoshuotxt.netT.xt.小.说.天.堂
上一章 下一章 (可以用方向键翻页,回车键返回目录) 加入收藏夏目漱石作品集
吾輩は猫である夏目漱石:我是猫三四郎夏目漱石代表作:我是猫我是猫