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《吾輩は猫である》 作者:夏目漱石

三 - 10

猫の足はあれども無きがごとし、どこを歩いても不器用な音のした試しがない。空を踏むがごとく、雲を行くがごとく、水中に磬(けい)を打つがごとく、洞裏(とうり)に瑟(しつ)を鼓(こ)するがごとく、醍醐(だいご)の妙味を甞(な)めて言詮(ごんせん)のほかに冷暖(れいだん)を自知(じち)するがごとし。月並な西洋館もなく、模範勝手もなく、車屋の神さんも、権助(ごんすけ)も、飯焚も、御嬢さまも、仲働(なかばたら)きも、鼻子夫人も、夫人の旦那様もない。行きたいところへ行って聞きたい話を聞いて、舌を出し尻尾(しっぽ)を掉(ふ)って、髭(ひげ)をぴんと立てて悠々(ゆうゆう)と帰るのみである。ことに吾輩はこの道に掛けては日本一の堪能(かんのう)である。草双紙(くさぞうし)にある猫又(ねこまた)の血脈を受けておりはせぬかと自(みずか)ら疑うくらいである。蟇(がま)の額(ひたい)には夜光(やこう)の明珠(めいしゅ)があると云うが、吾輩の尻尾には神祇釈教(しんぎしゃっきょう)恋無常(こいむじょう)は無論の事、満天下の人間を馬鹿にする一家相伝(いっかそうでん)の妙薬が詰め込んである。金田家の廊下を人の知らぬ間(ま)に横行するくらいは、仁王様が心太(ところてん)を踏み潰(つぶ)すよりも容易である。この時吾輩は我ながら、わが力量に感服して、これも普段大事にする尻尾の御蔭だなと気が付いて見るとただ置かれない。吾輩の尊敬する尻尾大明神を礼拝(らいはい)してニャン運長久を祈らばやと、ちょっと低頭して見たが、どうも少し見当(けんとう)が違うようである。なるべく尻尾の方を見て三拝しなければならん。尻尾の方を見ようと身体を廻すと尻尾も自然と廻る。追付こうと思って首をねじると、尻尾も同じ間隔をとって、先へ馳(か)け出す。なるほど天地玄黄(てんちげんこう)を三寸裏(り)に収めるほどの霊物だけあって、到底吾輩の手に合わない、尻尾を環(めぐ)る事七度(ななた)び半にして草臥(くたび)れたからやめにした。少々眼がくらむ。どこにいるのだかちょっと方角が分らなくなる。構うものかと滅茶苦茶にあるき廻る。障子の裏(うち)で鼻子の声がする。ここだと立ち留まって、左右の耳をはすに切って、息を凝(こ)らす。「貧乏教師の癖に生意気じゃありませんか」と例の金切(かなき)り声(ごえ)を振り立てる。「うん、生意気な奴だ、ちと懲(こ)らしめのためにいじめてやろう。あの学校にゃ国のものもいるからな」「誰がいるの?」「津木(つき)ピン助(すけ)や福地(ふくち)キシャゴがいるから、頼んでからかわしてやろう」吾輩は金田君の生国(しょうごく)は分らんが、妙な名前の人間ばかり揃(そろ)った所だと少々驚いた。金田君はなお語をついで、「あいつは英語の教師かい」と聞く。「はあ、車屋の神さんの話では英語のリードルか何か専門に教えるんだって云います」「どうせ碌(ろく)な教師じゃあるめえ」あるめえにも尠(すく)なからず感心した。「この間ピン助に遇(あ)ったら、私(わたし)の学校にゃ妙な奴がおります。生徒から先生番茶は英語で何と云いますと聞かれて、番茶はSavageteaであると真面目に答えたんで、教員間の物笑いとなっています、どうもあんな教員があるから、ほかのものの、迷惑になって困りますと云ったが、大方(おおかた)あいつの事だぜ」「あいつに極(きま)っていまさあ、そんな事を云いそうな面構(つらがま)えですよ、いやに髭(ひげ)なんか生(は)やして」「怪(け)しからん奴だ」髭を生やして怪しからなければ猫などは一疋だって怪しかりようがない。「それにあの迷亭とか、へべれけとか云う奴は、まあ何てえ、頓狂な跳返(はねっかえ)りなんでしょう、伯父の牧山男爵だなんて、あんな顔に男爵の伯父なんざ、有るはずがないと思ったんですもの」「御前がどこの馬の骨だか分らんものの言う事を真(ま)に受けるのも悪い」「悪いって、あんまり人を馬鹿にし過ぎるじゃありませんか」と大変残念そうである。不思議な事には寒月君の事は一言半句(いちごんはんく)も出ない。吾輩の忍んで来る前に評判記はすんだものか、またはすでに落第と事が極(きま)って念頭にないものか、その辺(へん)は懸念(けねん)もあるが仕方がない。しばらく佇(たたず)んでいると廊下を隔てて向うの座敷でベルの音がする。そらあすこにも何か事がある。後(おく)れぬ先に、とその方角へ歩を向ける。

来て見ると女が独(ひと)りで何か大声で話している。その声が鼻子とよく似ているところをもって推(お)すと、これが即ち当家の令嬢寒月君をして未遂入水(みすいじゅすい)をあえてせしめたる代物(しろもの)だろう。惜哉(おしいかな)障子越しで玉の御姿(おんすがた)を拝する事が出来ない。従って顔の真中に大きな鼻を祭り込んでいるか、どうだか受合えない。しかし談話の模様から鼻息の荒いところなどを綜合(そうごう)して考えて見ると、満更(まんざら)人の注意を惹(ひ)かぬ獅鼻(ししばな)とも思われない。女はしきりに喋舌(しゃべ)っているが相手の声が少しも聞えないのは、噂(うわさ)にきく電話というものであろう。「御前は大和(やまと)かい。明日(あした)ね、行くんだからね、鶉(うずら)の三を取っておいておくれ、いいかえ――分ったかい――なに分らない?おやいやだ。鶉の三を取るんだよ。――なんだって、――取れない?取れないはずはない、とるんだよ――へへへへへ御冗談(ごじょうだん)をだって――何が御冗談なんだよ――いやに人をおひゃらかすよ。全体御前は誰だい。長吉(ちょうきち)だ?長吉なんぞじゃ訳が分らない。お神さんに電話口へ出ろって御云いな――なに?私(わたく)しで何でも弁じます?――お前は失敬だよ。妾(あた)しを誰だか知ってるのかい。金田だよ。――へへへへへ善く存じておりますだって。ほんとに馬鹿だよこの人あ。――金田だってえばさ。――なに?――毎度御贔屓(ごひいき)にあずかりましてありがとうございます?――何がありがたいんだね。御礼なんか聞きたかあないやね――おやまた笑ってるよ。お前はよっぽど愚物(ぐぶつ)だね。――仰せの通りだって?――あんまり人を馬鹿にすると電話を切ってしまうよ。いいのかい。困らないのかよ――黙ってちゃ分らないじゃないか、何とか御云いなさいな」電話は長吉の方から切ったものか何の返事もないらしい。令嬢は癇癪(かんしゃく)を起してやけにベルをジャラジャラと廻す。足元で狆(ちん)が驚ろいて急に吠え出す。これは迂濶(うかつ)に出来ないと、急に飛び下りて椽(えん)の下へもぐり込む。

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